Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
注)当コラムの著作権は全てBarros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。

会社ウェブサイト   Facebook公式ページ    Twitter公式アカウント

2014年3月9日日曜日

フィリピン離婚承認裁判/駐日フィリピン大使館・領事館の杜撰な司法共助要請の実態

国際司法共助とは
例えばフィリピン国内の裁判手続に於いて、日本に在住する人物・団体に提訴状や召喚状などの文書送達を行う場合、両国間の国際司法共助が必要となります。すでに過去の記事でも送達手順を簡単に述べていますが、日比間の国際民事事件では管轄のフィリピン地方裁判所(RTC)裁判官によりフィリピン外務省(DFA)に日本に対する司法共助要請を行います。それを受けてDFAは宛先人住所により管轄圏別に振り分け、駐日フィリピン大使館若しくは領事館に送達を行います。(これはDFAの間違いであることは後述に)送達は国際スピード郵便(EMS)で行われ併せてFAXでも通知をしています。FAXの通知内容はEMSを受領後FAXでDFAに連絡をすること、そして日本外務省(MOFA)に必要書類と円指定の手数料を添え郵便局から司法関係送致文書として送達すること、の2点が重要なこととして記載されています。

長期間を要する司法共助手続
一方日本側での司法共助要請に対するルールは、駐日フィリピン大使館(署名権限者は同国大使)⇒MOFA領事局政策局(署名権限者は日本国外務大臣)⇒最高裁判所(署名権限者は最高裁判所所長)⇒管轄地方裁判所という流れになり、地方裁判所所長名にて宛先人に付郵便送達されます。そしてその受領証明については逆のルートとなります。

このルートで考えられるのはRTCから送られた文書が宛先人に届くまで早くても2~3ヶ月かかり、その受領証明が同RTCに送達されるまで、また同様の期間がかかるということです。つまり離婚承認裁判公判開始に必要な受領証明取得には、半年から長ければ1年かかることになります。

当社独自の実態調査結果
しかし当社で日本外務省領事局政策局に問い合わせ調査したところ、『2008年3月以降離婚承認裁判に関する司法共助要請は数多くあったが、その何れもが必要書類等が不足しているので駐日大使館に返送している。返送後に不足分を添えて司法共助再要請があったことは一度もない。つまりフィリピンに限って言えば司法共助要請が成立したことは一度もない』と断言されました。

さらに必要書類等不足についてDFAに説明したいのでその文書を求めました。MOFAでは当社の要求は直接受け入れることは出来ないということなので、当社専属弁護士からリクエストレターをメールで送り、「司法共助要請に関する必要書類についての説明」を添付ファイルで返信してもらいました。

そして『MOFAとしては本文書の扱いについては当社に一任し、今後フィリピン外務省から直接問い合せなどがあればそれは対応出来る。MOFA領事局政策局にも職務権限範囲があるので理解してもらいたい』という返答を即座にしてもらい日本行政の素晴らしさを再確認しました。

リクエストレターへの回答内容を箇条書きすると、
1.先ず駐日大使の署名の司法共助要請文書がない。
2.日本国での送達手数料が同封されていない。
3.駐日フィリピン領事館には司法共助要請権限がない。従って領事館からの要請は全て却下、返送している。
4.返送の場合も送達費用は在日大使館負担であるにも関わらず過去に於いて一度たりともその支払がなされていない。
という驚愕の内容で、非常に残念でしたがフィリピン行政官・事務官レベルが日本の小学生以下であり、その馬鹿さ加減に於いて世界有数の国民であることがはっきりしました。

また前の記事で言及したDFA行政官から、【裁判の提訴状・出頭命令文書には日本語翻訳文が必要であり、在比日本大使館が認める翻訳会社による翻訳及び認証印を受けること】についても併せて確認しました。

正規手続もまともに出来ない駐日フィリピン大使館
MOFAの答えは、『文書の日本語翻訳文は不要。翻訳の責任は受取人に帰するので、受取人が英文を理解できないのならば翻訳するのは受取人の義務である。フィリピン国内の事情に関しては言及は控えさせてもらう』ということでしたのでその回答を受けて在比日本大使館に確認しましたが、『そういう事実は一切ない。フィリピン外務省に確認しクレームを入れる』という回答を受け、DFAの上級行政官に当社としてもその旨を伝えています。

またその際にDFAが大使館圏と領事館圏に振り分けて送達していることは誤りであり、駐日領事館にはこれに関わる権限がないということも文書で提出しました。そしてその後は日系業者とDFA行政官の癒着の確たる証拠であった翻訳手続を要求されることはなくなりました。

この一連の事実が判明したのも元々は駐日フィリピン大使館の杜撰さからです。

当社で行っていた離婚承認裁判手続が公判前の段階で進まなくなりました。それまでは一度もそのようなことはなかったのですが、日本人前夫への提訴状・出頭命令の送達証明取得が約5ヶ月に渡り滞りました。それまでは約1ヶ月程度で出来ていたので送達ルートの洗い出しを行いました。

先ずDFAの上級行政官に相談したところ、『駐日大使館に毎週月曜日に状況報告の督促状を送っているが返信が一切ない。毎週火曜日に返答確認で問い合わせてほしい』とのことでした。

全てその場逃れの駐日フィリピン大使館対応
そして駐日フィリピン大使館に電話で問い合わせましたが、皆さんご存知の通り何回かけても電話を取ろうとしない。やっと繋がって用件を述べると『調べるので2時間後に電話してほしい』2時間後に電話をしたら『今まだ調査中なので明日電話してほしい』翌日電話をかけると担当者に代わると言ってたらい回し。20分くらいしてやっと『・・月・・日に日本外務省に送付した記録がある』との返答を得ました。

何故調べるのに時間がかかるのかお分かりになりますか。

駐日大使館に届く郵便物管理と記録管理の問題です。彼らは郵便物はダンボールに投げ込むだけ、FAXは垂れ流し、記録帳簿は字が汚くて判読できず、PCでの管理能力なし、だからです。

そこで上述の通りMOFA領事局政策局への問い合わせとなったのです。MOFAでは1分ほど事情を説明している間に、宛先人検索だけで瞬時にデータが出ていました。MOFAではさらに『この後すぐに駐日大使館に確認の電話を入れ明日中には御社に連絡をする』とまで言ってくれました。

しかし翌週になっても連絡がないのでMOFAに電話をすると『MOFAから却下、返送した文書はその当日の内に駐日大使館で受領した、という確認をさせた。そして御社にはその内容を伝えることになっていると話すと、大使館が連絡をするからMOFAから連絡はしなくていいと言うので御社の電話番号を教えた。従ってMOFAとしてはすでに大使館から御社に連絡がいっているものと思っていた』

これを聞いてMOFAに対してさえも言い訳、ウソで逃れようとする駐日大使館。これこそがフィリピン共和国の真の正体なのです。まともな国民たちは本当にお気の毒です。

この事件では当社はこれ以上駐日大使館には期待できないという判断をし、結局日本人前夫から委任状を受け提訴状及び出頭命令の直接受領の宣誓供述書を作成、公証役場での公証とMOFA認証を取得し駐日大使館でそれらの文書を認証、そしてDFA認証を付与した上でRTCに提出し公判を迎えることが出来ました。

やはり日本外務省が最後の頼みの綱に
最後に公判が終わった後にお礼と報告の連絡をMOFA領事局政策局にしました。MOFAからは以下の内容を伝えられました。『御社の尽力と機転には感心するし、その方法如何についてフィリピン裁判所で合法として受理されたのであれば、当局としては関知するものではない。本件は法律上「司法共助要請」と呼ぶものであり、当該国間の外交上に関わることなので相手国に内政干渉することは絶対にできないということを前提に考えてほしい。従って事件について要請があれば外交ルールに則り可能かどうか判断・検討し協力できるところはするが、フィリピンの対応が悪いとか、こうした方がいいとかの助言はできないし、相手国を中傷するようなことは絶対にできないので理解してほしい』

ところでバギオ在住?の方のブログで、バギオに領事出張サービスがあった時に、領事から離婚承認裁判文書の送達ルートについて聞いたということでフィリピン国内から日本までのルート記載記事を見ました。これはおかしいですね。記事にすること事態非常に軽率ではないですか。領事は上述の通り職務権限範囲があるので言及できないのですよ。日本国内での司法共助ルートについては問題ないですが、フィリピン国内のルートにまで口を滑らしたのであれば、その領事は厳重注意や懲戒の処分を受けることになるので、それは絶対にないと思いますがね。

注)当コラムの著作権は全てフィリピン法人Barros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。