Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
注)当コラムの著作権は全てBarros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。

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2014年8月8日金曜日

フィリピン離婚承認裁判/不正で2つの地方裁判所が引き続き監視リストに

この画像は当社の離婚承認裁判手続によって昨年10月に判決文が交付され、本年2月に取得した離婚承認注釈が付与されたNSO(国家統計局)前婚姻証明書です。

順に説明すると 
1.向かって左側が戸籍謄本に基づく日本での離婚年月日、当事者氏名の注釈 
2.右側がマロロス市地方裁判所による離婚承認の注釈 
離婚承認裁判注釈はこのように必ず左右に注釈が入ります。

しかしこの文書では下にも右側と同じような注釈が入っています。何故なのかお分かりになりますか?

そうです。 
右側は不正が蔓延っていることで有名なマロロス市地方裁判所に於いて、裁判文書偽造により不正登録申請された結果、国家統計局(NSO)が登録してしまったものです。

これをつかまされた人は日本で再婚手続をするため駐日フィリピン大使館で婚姻要件具備証明書の申請をしましたが、本国への確認によって正規の裁判手続を経て登録されたものではないということで申請が却下されました。マロロスでの裁判手続は、その方の母親が在比日本大使館周辺のマドリガルコンパウンドにある業者に依頼したものでした。その業者はすでに会社を閉鎖し行方が分からなくなっています。(当社の勧めによりその顧客は詐欺罪及び損害賠償請求で同社を提訴中。日本の行政書士にはこの周辺の業者に裁判を丸投げしている輩が多い)

その方は在留期限が迫っているため行政書士、弁護士などを含めいろいろな人にあたりましたが、それぞれ言うことが異なり十分な知識もない様子だったので、最終的に離婚承認裁判と結婚手続の顧客で、すでに再来日をしているフィリピン人の友人と日本人夫の薦めを聞いて当社に依頼してきたのです。

マロロス市地方裁判所に於ける調査では、民事事件番号や担当裁判官は確かに存在するが全くの別事件であることが判明しました。そもそも離婚承認裁判は民事事件番号ではなく特別訴訟番号になります。業者はそのことが理解できていなかったのでしょう。見る人が見ればすぐに偽造だと判ってしまう子供騙しです。そこで当社専属弁護士によりNSOに申立をした上で、新たに違う地方裁判所に於いて離婚承認裁判を行いました。提訴前には在留期限が切れるのでこの方は帰国しています。

そうして約10ヶ月かけて審決し更に4ヶ月かけてNSO登録に至ったのが、最初の画像の注釈付前婚姻証明書なのです。当社にはこのように意図せず被害者となってしまった方が相談に来て、お話した結果裁判をやり直している顧客が現在4名います。

このような不正は日本人業者を中心に頻繁に行われています。マロロスの他にはカビテ州イムスが未だに数が非常に多い。この2箇所の地方裁判所は昨年NSOの監視リストに入ったにも拘らず、一向に改善が見られないということで都合5年間監視リストから外れることはなくなりました。

依頼者の自業自得/自己責任と言えばそれまでですが、原因は依頼者が早く裁判が終わることを最優先してしまうからです。そういう需要があるので馬鹿なことを考える業者が出てくるのです。このような業者は何れ捕まるでしょうし請け負った弁護士も資格を失うことでしょう。依頼者は期間も費用も全て無為に費やしたことになり偽造公文書行使等罪に問われる可能性もあるということも忘れてはいけません。フィリピンに関わる、若しくは進出を計画する企業などを例に考えても、コンプライアンスを重視するところは絶対に大きな失敗はしないのです。

ところでNSOの話が出ましたが国家統計局(National Statistics Office、通称NSO)はすでに格上げされフィリピン統計庁(Philippine Statistics Authority、通称PSA)に名称が変わっています。しかし馴染まないのか国民は今もNSOと呼んでいます。長官は長期間の在任であったカルメリータ N. エリクタ(Carmelita N. Ericta)氏(カメリタ・エリクタという翻訳は誤り。本人が可哀相。今からでも直しましょう)から、リサ グレイス S. ベルサレス、博士(Lisa Grace S. Bersales, PhD)氏になっています。Phd=博士(Doctor of Philosophy)という肩書きがあるのはフィリピンでは珍しくないことです。統計庁長官とは関係ないだろう、何で?という方も多いと思いますが、これはい云わば社会的地位を表すもので、その国家資格取得者であることを示すために氏名の前後につけているのです。

ただし何でも付けられるわけではありません。つけられている資格は、専門職資格管理委員会(The Professional Regulation Commission、通称PRC)や最高裁判所司法試験委員会(Supreme Court Bar Examination Committee)等で得られる国家資格です。弁護士、医師、エンジニア、会計士、看護士、教師、船員など国家試験にパスした者だけが得られる、フィリピンではエリートの証明と言っていい資格のことです。このような資格を持つ者はOFW(海外フィリピン人労働者)としての雇用も優遇されるのです。従ってフィリピン国籍者のみがこれに該当するので、フィリピンにいる日本人でこのようなフィリピン国家資格の肩書きを使っている者がいたら、それは何か良くない目的がある人間と考えて間違いありません。

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