Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
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2014年12月7日日曜日

フィリピン・マーケティング/教育改革「K to 12」で広がる若年層の可能性

フィリピンは初等教育6年間、中等教育4年間の6-4制でアジアで唯一中等教育が4年間しかない国でしたが、2012年に施行された教育制度改革「K to 12」により他の国々と同水準になりました。これを何だ2年間増やしただけじゃないかと考える人は、この国をダメにしている最大の原因が「教育」であることを深く理解する必要があります。

システムとしては6-3-3制だ、いや6-6制だという情報が飛び交っていましたが、実際のシステムは6-4制から6-4-2制への変革です。

この国では6年制の小学校(Elementary/初等教育)、そして4年制の中学校(High School/中等教育)を終えると、そこで若年層教育がストップし進学しない/できない国民は、その時点で人生に於ける学習脳を閉じていました。進学できる国民はカレッジと呼ばれる専門学校やユニヴァーシティと呼ばれる大学に進学していました。ハイスクールを高校、カレッジを大学と勘違いしている日本人の方が非常に多いのですが、それを日本基準に合致させて考えるのはとんでもない大きな間違いです。

つまり本当の意味での中等学校になるということで、6-4-2制の6はElementary School、4はJunior High School、2はSenior High Schoolと呼ばれることになりました。Senior High Schoolは中等教育過程なのに日本では高等学校と呼んでいますが、同じ6-3-3制のアメリカでは中等学校(シニア)という扱いです。

6-3-3制ではなく6-4-2制としたのは、6-4が修了した時点で残りの2年間をカレッジで修了可能という措置を講じることにより、K12改革前までこの国をある意味支えてきた教育産業を破壊してしまうような制度変更を回避する配慮からです。しかしこの措置は暫定的なものと考えられ、6-4制の影響がなくなる時点で6-3-3制に移行する可能性があります。新制度は今後カレッジなどの教育産業にも求められる変革に対し与えられた一定の猶予期間とも考えられるからです。

この改革により恩恵を受けるのはもちろん国民ですが、ただの恩恵ではなく彼らの将来や人生設計を劇的に変える可能性を持った改革としてフィリピン史上に於いても画期的なものとなることでしょう。

というのは旧制度では日本の6-3-3制や、それと類似の制度を持つ国々に比べると、基礎教育(初等・中等教育)が2年間少ないにも関わらず、他国の12年間に相当する学習内容を10年間の詰め込み教育で実施していたため、落ちこぼれる生徒の増大によりその先の進路に於いても決定的な基礎学力低下を招く結果となっていたからです。各種国家試験合格率の低下も著しく、これも全て旧教育制度による最大の弊害であった基礎学力の低下に原因があります。

またこの旧制度は落ちこぼれ生徒増大や基礎学力低下を招いただけでなく、低所得者層の貧困脱出を困難に陥れ、更なる貧困の拡大という負の連鎖を生むに至りました。その理由は就業年齢の問題です。フィリピンの就業年齢は成人年齢と同じ18歳です。しかしながら中等教育修了年齢は旧制度では16歳でした。驚くべきことですが、進学しない者はハイスクール卒業と同時に2年間の失業状態となっていたのです。国家全体の失業者数の約30%をハイスクール卒学歴の者が占め、さらに言えば失業者の約50%が15歳から24歳の若年青年層なのです。

ハイスクールを卒業しても2年間の教育期間不足により海外留学もできない、海外出稼ぎ労働者(OFW)となった優れた資格を持つ人材であっても、2年間の不足により常に一段階下の資格ランクとしか見做されず、人材輸出産業国と言われるフィリピンの国益を大きく損ねてきたのです。

このフィリピン最悪の制度であった教育制度の改革により、低所得者層であってもハイスクール卒業と同時に就業できることになったことは勤労学生の増加を生むことにもなり、結果として教育機関の活性化、そして基礎学力が充実した優秀な人材の増大にも繋がる大改革と言えます。今まで貧困層は永久に貧困層のままでいるしかなかった彼らの未来が、自らの意志と努力でも変えることが可能になったのです。そしてこれが意味するところは、現在でも年々増大している中間層に、低所得者層/貧困層を脱した中間層が加わるため、その割合が今後は拡大し続けていくことは明白です。マーケティングとしては、この新中間層をターゲットとして取り込んでいく戦略をイノベーションプランに加えていくべきであると考えています。

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