Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
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2014年1月2日木曜日

フィリピンにおける離婚承認裁判とは

離婚承認裁判とは
離婚承認裁判とは正式には「海外離婚の司法承認及び執行」(Judicial Recognition and Enforcement of Foreign Divorce)と呼ばれる裁判手続のことです。つまり日本で離婚したフィリピン人が本国で婚姻状態にある身分事項を再婚可能なものにするため司法承認を申し立てるのがこの裁判手続なのです。
必要書類は?
この申立に日本から必要な書類は、役所からの婚姻と離婚の事項記載がある前配偶者の戸籍謄本2通、地方法務局からの離婚届記載事項証明書1通、前配偶者の身分証(パスポート・運転免許証・住基カードの何れか)のコピー1通、在フィリピン日本大使館書式委任状(申請用と受領用)2通、戸籍謄本1通と前配偶者の身分証、そして委任状は在比日本大使館から離婚証明書を発行してもらうためのものです。戸籍謄本の残り1通と離婚届記載事項証明書は英訳し同大使館にて翻訳者署名証明を付与して裁判所に提出します。大使館から交付された離婚証明書はフィリピン外務省で認証してもらいさらにそれをマニラ民事登録局総局で認証を受けます。

またサポート書類として当社では日本の民法の英訳本(日本法務省の認可を受けて発行されたもの)とその離婚記載部分抜粋のコピー、法務省ウェブサイトにある民法英訳の該当箇所のコピーなどを提出していますが、依頼主によっては駐日フィリピン大使館・領事館からの離婚届受理証明書だったり、役所からの離婚届受理証明書(要英訳)なども提供されますので、これらは不要なのですが場合によってダメ押しの意味で裁判所に提出しています。
公判までの長い期間
提訴状の作成が終わり揃った書類と共に裁判所に提出しますが、これから公判まではだいたい3ヶ月はかかります。国際ルールで言えばこの裁判手続は両国の外務省による司法共助が必要で、日本で離婚したフィリピン人が本国で離婚承認裁判を起こしたとなると、本来は司法共助の手続を踏んだ上で公判が認められることになります。
駐日フィリピン大使館・領事館のいい加減さが問題
どういうことかと言うと、提訴し公判日が確定すると両当事者に告知がされます。日本にいる前配偶者に対しての告知内容は提訴状と出頭命令です。これらの文書が申立をしたフィリピンの地方裁判所からフィリピン外務省へ送達、それを外務省は駐日フィリピン大使館に送達、大使館は司法幇助手続文書と手数料を加え日本の外務省に送達、日本外務省が条件を満たしていると判断できる文書についてのみ最高裁判所に送達、最高裁から該当する地方裁判所に送達、最後に前配偶者のもとに特別送達郵便で送られます。そして前配偶者の受領、宛先人不明などの証明が今度は逆ルートでフィリピンの地方裁判所に送達されます。日本の外務省に問い合わせれば分かりますが、この司法共助手続は片道で早くても3ヶ月はかかります。つまりフィリピンの地方裁判所に戻ってくるまでは半年以上かかるのです。

しかし不思議なことに、日本の外務省ではフィリピン大使館からの離婚承認裁判の司法共助は、文書の不足や手続費用未払によって2008年以来一度も成立したことがないということです。このあたりフィリピン大使館のいい加減さがはっきりと分かりますよね。外務省の海外政府機関でさえこの有様なんです。

このことでフィリピン外務省に直接苦情を申し立てたことがあります。このとき対応してくれた上級行政官が非常に真摯な方で2日おきに在日大使館にFAXを流して進捗を報告するように連絡を入れてくれましたが、駐日大使館からは何の返事もありません。電話をかけても居留守。そこでたまたま帰国していた副領事を呼びつけこの対応の不味さについて怒鳴りつけました。(その後対応が変わったのかと言えば全く変わりませんでしたが)これではいつまでたっても始まりませんので当社では合法的な他の方法で対処しています。
勝手に在比日本大使館指定業者リストを作る悪徳日本人業者
またその前には外務省に送達の件で訪問すると、対応に出た行政官から文書が英文なので日本語翻訳をつけるように言われました。翻訳などは当社で問題なく出来るのでそれをつけますかと言うと、日本大使館から指定されている業者があるのでそれ以外の翻訳は送達しないと言われました。そしてリストを渡されましたがその中にある業者はどれも翻訳者は一人もいなくて他社に委託しているところばかりでした。中には当社に委託してきている業者も含まれています。このような癒着体制は許しておけないので日本大使館に行き領事にリストを渡し大使館が指定しているというのが事実なら日本の週刊誌にネタとして提供すると憤慨しました。その後そのクダらないリストはフィリピン外務省から消滅しましたが、金の臭いをかぎ分けるハイエナ業者恐るべしだと思いました。

偽装裁判や偽造文書の多さに国家統計局も注視
また離婚承認裁判は偽造や不正手続も横行していますので注意が必要です。前述のとおり公判までだいたい3ヶ月、公判は普通にやると3回、EX-Parteという手続が認められれば1回で終わります。EX-Parteは裁判所が全ての文書、証拠物件が出揃っていてこれ以上審議を尽くす必要がないとの申立を認めた場合に行われるもので、これができれば公判当日や翌公判日で終わらせることができます。そして判決文が交付されるまで早くて2ヶ月、次に審決証明と登録命令が交付されるまで早くて1ヶ月、NSO婚姻証明書に離婚承認の注釈が入るまで早くて1ヶ月、という流れで全ての手続が最短で進んでも8ヶ月くらいかかるんです。しかしそうは都合よく進まないので1年半近くかかるものと考えるのがいいと思います。

当事者や日本人の情報誤認や知識不足も悲劇の原因に
日本人の悪い癖でフィリピンだから簡単で金さえ出せば早くできると考える方が多いですが、やっていることは裁判なのです。行政事務が最先端を行く日本でも裁判がそんなに早く終わりますか?まして裁判は個人個人異なりますし裁く側もフィリピン人という手ごわい人間たちなんです。日本ではよく、私は2ヶ月で離婚承認できたとさも自慢げに友人に話す人がたくさんいますが、これは自分は不正をやりましたと言っているのと同じなんです。偽造・不正で入国できたとしてもいつか破綻の日がやって来ます。おそらくは不正をやる業者に任せたからでしょうが、たとえ知らなかったにしても自己責任ですので日本の行政はいつまでも見逃してくれるほど甘くはありません。これから裁判を行う方は決して急がないで腰を据えて待つ心構えをして下さい。それが待てない方は裁判が必要な相手など選ばないことです。