フィリピンでの婚姻無効裁判は「アナルメント」(Annulment)と呼ばれていることはよく知られていますが、これは「Declaration of Nullity of Marriage」、日本語に訳せば「婚姻無効宣告」というのが裁判で使用される正式な呼び方です。この裁判は一般的には【フィリピン人が本国においてフィリピン人との婚姻歴があるので、それを無効にして再婚したい】場合に行うものです。
しかし当社の事例で言えば【フィリピン人が本国において外国人と結婚したが、その外国人が本国での婚姻届出を行わないまま消息不明になったので婚姻を無効にして再婚したい】、【本国で日本人と結婚したフィリピン人が日本において離婚したが、再婚するための本国での離婚裁判に必要な日本からの文書が、前夫の協力拒否や消息不明のため取得できない】というようなケースに於いても、やはりこの婚姻無効裁判を行うことになります。
婚姻無効裁判は原告が外国人であっても可能(地方裁判所によっては不可)ですので、日本人であっても原告となることができます。公判は全て英語で行われますので、法廷英語が理解できない方には裁判所で承認された通訳が付きます。例えフィリピン人であっても英語が理解できないと裁判官が判断すれば通訳が付けられます。これは公文書も含めフィリピンでは公用語は英語であり、それに関わる会話も英語を使用するということを法廷では厳格に守っているからであり、英語が理解できる外国人にとっては非常に都合がいいシステムです。ただし地方の裁判所では外国人に聞かれたくない内容をその地方の言語を使って会話されることがありますので、もしその言語が理解できないのであれば、個人的にそれに適う通訳を常に用意しておくことが大切です。
問題はフィリピン人のウソから始まる
日本人の方にとって悲劇なのはフィリピン人という国民は、何か問題があっても発覚するまで若しくは土壇場で必要に駆られるまで真実を言わないことです。婚姻手続きで例を挙げれば、日本人が相手のフィリピン人に婚姻歴がないか尋ねても「結婚はしていない」「すでに別れた」「相手が死亡した」などとウソをつくことです。結婚して在留資格を取得してもビザが交付されなかった、その時になって初めて婚姻歴があり重婚であることが判明したりします。
一度結婚すれば婚姻無効裁判を経なければ、別れていようと、相手がどこにいるのか分からなくても、再婚はできないのです。いや、フィリピン人のことですので非合法に再婚し重婚どころか三重、四重婚の人間もいます。相手が死んだのなら死亡証明書があるのに、それすらも証拠として出せなければすぐにウソと分かってしまうようなことでも、開き直りながら最後の最後までとことん主張を曲げません。
こういったことが日本の法務省ではフィリピン人は過去を反省せず、一度不正をした者は二度三度不正を繰り返す国民と判断している所以です。このようなフィリピン人は昔はともかく現在はその婚姻を無効にして、日本人との婚姻を有効にしない限り日本入国は不可能なのです。
婚姻無効裁判手続きの流れ
婚姻無効裁判の流れは大まかには次の通りです。
弁護士に依頼、裁判所提訴準備、裁判所保安官登録、精神鑑定受診、提訴告示、判事登録、提訴登録申請、予審(1回)、公判(通常は4回)、速記者登録、判決告示、判決文交付、審決証明及び登録命令交付、地方民事登録局登録、マニラ市民事登録総局登録、国家統計局登録移管、婚姻無効注釈付き前婚姻証明書交付。当たり前ですがこれら全てには費用がかかります。
精神鑑定は裁判所指定の専門医クリニックで行います。受診者は原告と原告の証人です。原告の友人など血縁関係のない方が証人になることができます。当社では証人は原告の結婚生活を第三者の立場で熟知していなければなりませんし、個人情報の守秘義務が果たせる方に限定しております。
子供の養育、共有財産、相続の問題も含む民事裁判は簡単には終わらない
裁判に要する期間は2年から2年半ですが、当然ケースバイケースで個人差があります。不正や偽造をしない前提でフィリピンの弁護士に聞けば、殆どの者は約3年と答えるはずです。また離婚承認裁判と同様、相手が外国人である場合、両国外務省の司法幇助が必要になるので期間もさらにかかってしまいます。当社ではこういった期間を少しでも短縮するために、パーソナルサービス申請などあらゆる合法的手段(当社業務の知的財産権に関わることですのでこれ以上は公開はしません)を使って可能な限り早期に終了できるよう努めています。(期間がかかればかかるほど当社の経費も大きくなってしまいます)それでも少なくとも1年半から2年はかかるのです。
裁判手続きを希望される日本人の方はとかく『費用をかけずに即終わらせてほしい』ということを言いがちです。しかしそうなると不正か偽造を誘発することになってしまいます。日本にフィリピン人を招聘することが裁判を行う第一目的でもあるので、招聘不可能になってしまってからでは後の祭りなのです。