Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
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2014年2月18日火曜日

フィリピンでのフードビジネス・コンサルティング(その弐)

「その壱」ではプレ・マーケティングの基本戦略についてお話しました。今回はレストラン・ビジネス形態や店舗進出地について考えていきます。
(レストラン・フランチャイズやカート(屋台式)フランチャイズについては、オーナーが直接契約すれば済むことですので特にコンサルティング記事にしません。詳細を知りたい方は直接ご連絡下さい)


フィリピン・レストランビジネスの概要を知ること
始めにオーナーがビジネス知識として知っておくべき形態、市場シェア、エリア、将来性について述べていきます。

レストラン形態
先ず形態についてですが、ロンドンにある世界有数のマーケティング企業Euromonitor International Ltd.の最新調査によると、フィリピン全土の外食店舗数は約10万店、その内訳はフランチャイズ系が25%を占め、残り75%はインディペンデント(独立経営)系です。しかしこれらの総売上計上額では、フランチャイズ系が70%、インディペンデント系が30%となっており、フランチャイズ系が圧倒的に優位であることが分かります。

レストラン市場シェア
市場シェアで見ると、本格レストランが20%、ファーストフード25%、カフェ&バー25%、ホットドッグ、アイスクリーム、ドーナツ、ドリンク等単体商品販売のキオスク系が25%、テイクアウト&デリバリー系3%、その他2%です。この3年間の推移ではファーストフードとキオスク系がやや増加、本格レストラン系がやや減少、その他は変わらずとなっています。カフェ&バーは増加しているように思えますが、反面廃業している数も多いのでこのようなデータとなっています。

レストラン売上シェア
一店舗あたりの2012年の年間売上額ではファーストフード1,800 万ペソ、キオスク系200 万ペソ、市場全体平均では一店舗あたりの年間売上額は約440 万ペソです。フランチャイズ系企業別で見ると売上シェアは、Jollibee Foods Corporationが40%強と圧倒的強さを誇っています。それに続くMcDonald's Companyは10%以下に過ぎません。

またジョリビーは単なるブランドではなく、チョウキン(Chowking)、グリニッチ(Greenwich Pizza)、レッドリボン(Red Ribbon)、マンギナサル(Mang Inasal)、バーガーキング・フィリピンズ(Burger King Philippines)などを次々と買収し傘下におさめるアジアで最も巨大なフードビジネス・グループ企業の一つなのです。

フランチャイズ系はローカル系で70%が占められ外国企業ライセンスのフランチャイズ系は30%です。この数値でも日系を含めた外国系が苦戦しているのが分かると思います。日系の中ではミスタードーナツが一番の売上シェアですがそれでも約2.5%です。

つまりはジョリビーグループの一人勝ちで、私達が生きている内にこの序列が変わることは100%ないでしょう。

一方フィリピン国内の市場規模に目を移せば、2012年における外食市場は約3,700億ペソ、産業成長率は2005年の12%をピークに年々減少傾向にあり、人口が増加しているにも拘らずここ3年間は成長率1~2%に留まっています。


レストラン・エリア
次にエリアに関してですが、一般家庭(除貧困家庭)の約10%が、月世帯収入の約30%をNCRでの外食にあてています。その次に高率なのがCALABARZONとCENTRAL LUZONです。もしモールやショッピング街に出店を考えるのであれば第一選択エリアはこの3地域となります。

将来性のあるターゲットの特定
またターゲットを企業勤務の社員や学生とするのであれば、最も効率的に集客できる朝食、昼食、デザートにメニューを絞った戦略を取ります。これは学生たちの登校前/昼食時、そして社員たちの出社前/昼食時の外食率が増大しているからです。特にNCRでその傾向が顕著で約70%がその食事行動を取っています。

しかし一方ではそれ以外の時間帯での食事、特にレストラン系での食事となると、学生8%、社員6%が朝食・昼食以外で利用しているに過ぎません。日本人オーナーがこの点を十分に認識せずに、思い込みのコンセプトやメニューの優位性だけで出店すると間違いなく失敗します。日本とフィリピンではレストランニーズが全く異なるのです。日本のような居酒屋やクラブなどは、、まともな生活をしているフィリピン人には無用の長物でしかありません。

学生たちの登校前/昼食時、そして社員たちの出社前/昼食時で約70%を占める。学校や仕事が終われば家族が待つ家に帰宅するだけ。ここに日本人の大きな勘違いがあるのです。そして高すぎず安すぎず、毎日来店しても飽きない素材を活かしたメニュー開発が求められます。


市場としての将来性が著しく高くなるBPO進出エリア
市場の将来性としては、BPO産業の進出候補地である都市にそれを求めるのも一考の余地があります。

                   カビテ州バコール市(Bacoor, Cavite)、ラグナ州サンタ・ロサ市(Sta. Rosa City, Laguna)、バタンガス州リパ市(Lipa City, Batangas)、ブラカン州マロロス市(Malolos City, Bulacan)、ベンゲット州バギオ市(Baguio City, Benguet)、イロイロ州イロイロ市(Iloilo City, Iloilo)、ミサミス・オリエンタル州カガヤン・デ・オロ市(Cagayan De Oro City,Misamis Oriental)、などがBPO企業の参入によりこれから一層の発展が期待できる都市です。しかしながら主だったフランチャイズは既に進出を果たしているため、新規参入店は競合店との価格やメニューなどでの優位性を争うことになるでしょう。


この先はプロのコンサルティングが威力を発揮する
さて必要知識が理解出来たところでこの先はコンサルティングになります。しっかりとしたマーケティングを行いエリアが決まったら、具体的な出店計画を考える段階になりますが、一番重要なことは何を基準条件に決めるのかということです。

優位性が非常に高い自費店舗建設
レストランなどの経営が未経験の人は、出来ればこれは最初の基本戦略を練る段階で安易にテナントのレントと決めてしまうのではなく、小規模であっても立地を購入し店舗建設の方向を模索するのがベストです。規模が小さければ当然少人数で開店できます。しかしこれは優位性に繋がることなのです。スタッフを家族だけで始めることもできます。居住も出来るものを建設すれば移動する必要もなくなりますし、仕込みや閉店後の清掃なども楽になります。スタッフを外部雇用するのであれば、開店まで半年近くはスタッフ研修をしなければなりません。家族ならばこの期間を半分以下にすることが出来ます。その中でマネジメント能力がある家族の見極めをすればいいのです。特に開業して半年くらいはそれで対応していきます。

テナントを賃貸する場合は慎重に
テナント物件を借りる場合は以下の点に注意します。

1.営業権付きの物件には絶対に手を出さない。
主にマラテやエルミタの繁華街物件になりますが、営業が立ち行かなくなった店主が営業権を売ると言って話を持ちかけてくる場合があります。物件自体のオーナーは別なので物件を賃貸している身分のくせに、好立地をエサに営業権買取を吹っかけてきます。これは営業権転売ビジネスと言ってこの最悪エリアでは騙される人が続出していますので、オイシそうな話があっても絶対に相手にしないことです。儲かる確信があるのならばお前が自分でやれという次元の低い話です。

2.建設中のコンドミニアムへの居住者客などをあてこんだ周辺テナントやモール付きコンドミニアムのテナントはスルーする。
フィリピンのコンドミニアムは投資ビジネスであり居住するものではありません。登記期間中の納税前に販売できれば大きな利益になりますが、売れなければ賃貸にまわすしかありませんが借り手優位市場になります。このコンドミニアム投資バブルもあと2年ほどで終焉を向かえ、完成したコンドミニアムは借り手も付かずゴーストマンション化していきます。借り手をつけるために賃貸料を下げれば居住者の質が悪化します。悪党の巣窟化となることも有り得るのです。そのような場所にでも出店するのは騙されやすい日本人だけです。

3.モールブランドに騙されない。立地が悪いテナントなら断る。
たとえ高級モールであっても簡単には出店許可審査は通りません。人脈がなければ何年も何箇所もまわってもなかなか許可してもらえないこともあります。そして許可が出たと思ったら客の動線がない悪条件であったりもします。自分の戦略に自信を持っているのならば無理に悪条件の中に出店する必要はありません。条件が悪いところは断るという勇気もオーナーの資質なのです。出店したいモールがあれば店舗状況を常に観察しておくことです。悪立地のテナントはすぐに潰れています。そして閉店直後に「SOON TO OPEN」の案内が貼り出されています。条件が悪いところはこれを繰り返しているのです。

4.居抜き物件の賃貸はメリットとデメリットを考慮し、できれば手を出さない。
居抜きは上記のような営業権付き物件でなければ、コストが比較的安く済み短期間で営業開始が出来るというメリットがあります。しかしインテリアデザインをそのまま利用するのであれば、基本戦略で考えたコンセプトを捨てることにもなります。これをコンセプト通りにしようとしたら結局コストがかかるため、居抜き物件を選んだ意味がなくなります。そのために前店も同じようなレストランで共通点が多ければいいのですが、全く異なるものの場合は問題があります。たとえばカレーや焼肉など匂いの強い料理を扱った店であれば、その匂いを除去することも一苦労になります。前店が同様の料理を出していたならば、そのイメージは簡単には変えにくいということもあります。また最大のデメリットとして考えられるのは、器具や備品の保存状態が悪かったり、店舗自体が老朽化していることが多いということです。

出店エリアマーケティングの際の視点
物件選びでマーケティングするのであれば、第一にそのエリアでの男女別人口、世代別人口、企業数と従業員数、学校数と学生数、店舗予定地での通行量、アクセス手段と交通機関利用者数を調査します。そして店舗候補が交通機関のメインとなる乗降場所から認識し易いかどうか、様々な角度から見る必要があります。

第二には競合店の存在確認です。同じようなメニューを持つ競合店の有無は実際に客としてチェックします。競合店の有無にはそれぞれメリットとデメリットがあります。

競合店がある場合の考え方は、競合エリアに出店し他店の集客に便乗することです。これはフィリピンでは普通に見られる光景です。ある店が繁盛しているとその周辺に同じような店舗が、どんどんと増殖してくるのがフィリピンなのです。それに対し誰も文句をつける人間はいません。他店を利して集客し、自店は優位性があり差別化したメニューやサービスを提供すればいいのです。ただし一人勝ちを目指す必要はありません。競合エリアごと発展できればOKと考えることです。数ヶ月もすれば勝者と敗者がはっきりしてきます。

競合店が無い/少ない場合についてですが、こちらの方が前者よりもはるかに慎重なマーケティングが必要になります。その際先ず第一に自店がそのエリアで一番乗りであるのか、すでに出店されたが何かの理由で閉店となったのかについて調べます。その結果で立地が悪いのか、メニューの組み合わせが悪いのか、その両方なのか、何故出店しないエリアなのかについて調べます。出店エリアには必ずそういった二面性の存在を認識する必要があるのです。


その参に続く