Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
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2014年2月23日日曜日

フィリピンでのフードビジネス・コンサルティング(その参)

今回は開業・運転資金、内外装、販促活動、開業後のマーケティングなどについて、フィリピン人オーナー客のレストランを例に挙げ述べさせていただきます。尚このテーマはこれを以って最終回とします。開業までの資金と開業後の運転資金のバランス運転資金は経営が軌道に乗るまでの期間又は撤退するまでの期間で考えます。それを判断するのは既述の通り半年間としますが、撤退する場合にも備え、その1ヶ月前には閉業経費を計算し資金を蓄えておきます。従って運転資金は半年間売上がなくてもランニングコストを維持できる、そしてそれに閉業資金を加えたものとします。ただし半年間は目安であってオーナーの意向や、レストランメニューによってその設定は柔軟に変えていく必要があります。想定以上の成果を収めたフィリピン人オーナーの日本食レストラン当社のコンサルティングを依頼したフィリピン人オーナーの例を挙げますと、彼はそれまで中古車販売&洗車業の店舗を経営していましたが、日本食、特にラーメンや丼物が好きなので、店舗を閉め日本食関係のレストランをやりたいと2011年10月に相談してきました。そこで当社マーケティング&コンサルティングにより2012年3月に開業に漕ぎ着けました。

メニューや内外装、従業員雇用についてはオーナーの強い意向で彼の主導で行いました。ターゲットはフィリピン人アッパーミドル層を中心としました。しかし業務契約内容から当社でサジェスチョンできる部分ではなかったため、味の問題については解消されていないまま開業となりました。

つまりTOKYO TOKYOやRAI RAI KENなどのような、日本食モドキ・レストランが出しているものと何ら変わりばえしませんでした。まともな日本食を作れる料理人を雇用すべきとはアドバイスしましたが、人件費面で難しいということで見送ったのです。
店舗は一番乗りではなく和食レストラン敗退の地レストランは中古車販売&洗車業店舗を取り壊し同じ土地に3階建ビルで建設しました。メトロマニラの中心部から外れた都市のローカル色の強い場所で、優位点は幹線道路沿線、近くに小中学校や病院、マーケットがあるという程度でした。店舗から2キロ以内にRAI RAI KEN、KITARO、TERIYAKI BOY、そしてSUSHI BARの4店舗がありましたが、見事に廃業していることも判明しました。最終コンサルティングに従い営業開始これらの条件からオーナーには次の内容のコンサルティングを伝え了承してもらいました。

1.オーナーが考える価格を下げる。
2.メニューはラーメン4種、カツ丼、中華丼、親子丼、
  チャーハン2種、餃子3種、オムライス2種、チキンライス、
  定食メニューでハンバーグステーキ、豚カツ、
  チキンカツ、焼肉、エビフライ、フィッシュフライ、
  その他当社オリジナルの日比フュージョンメニュー3種とする。
3.上記2の中から麺スープ系以外をテイクアウトメニューとしても提供する。
4.デリバリーは絶対に行わない。リスク管理やコストの観点からテイクアウトで十分。
  その分テイクアウトの容器にコストをかけイメージアップを図る。
5.3ヶ月間はスタッフ教育に集中する。
6.駐車場が狭いので路駐も含め誘導スタッフを1名常駐させ
  客からのメニュー等の質問に対しマネージャーレベルで接客トークできる教育をする。
7.食材品質を維持し、料理人には毎月研修を行い味の向上に努める。
8.毎月1回新作メニューをアンケート記入を条件に無料提供しその反応をデータ化する。
9.店内にCCTVカメラを設置し顧客&スタッフ行動をモニターする。
10. 10ヶ月間は売上が低くても耐える。
この方針で2012年3月1日に営業を開始しました。
開店から5ヶ月間は苦戦想定通り2012年8月上旬までは非常に低調で苦戦していましたので、その後1ヶ月間当社とレストランスタッフ共同による販促活動を行いました。そして2012年10月中旬にオーナーからこの2週間連日大盛況であると報告を受けました。そこでオーナー以下スタッフが気を抜くといけないので、フォローアップのマーケティング実施と同時に、接客サービス再教育、メニュー見直しを徹底しました。

この盛況に火をつけたのは現在も続いているラーメン&豚カツブームでした。折りしもラーメンや豚カツの日系レストランが次々と参入してきた時期に重なっており、販促活動により店舗地域の人々が情報をネット拡散したり口コミしてくれたことも功を奏しました。

日本食は興味本位でモドキ・レストランに行くくらいしか殆どのフィリピン人は知らないし、その味も彼らの口に合わない中途半端さがある。エルミタやマラテあるレストランは地域の危険性の問題から、まともなフィリピン人富裕層やアッパーミドル層は行かない。マカティのリトル東京とその周辺は日系企業勤務の日本人や在留邦人ばかりで入り辛い。

従ってこの店のコンセプトは地域の人々のための和食入門的レストランと設定。人件費・経費の垂れ流しを防ぐため、週6日営業、時間を11時から14時、17時から21時の2部制としました。

その成果は40名客席の1時間稼働率は11時~14時で50%、17時~22時は95%。客の平均滞在時間はオーダー受注後からの計測で50~60分。入るのを諦めた客はテイクアウト注文するのですがこの売上は全売上の10%。一日の顧客数約250名+テイクアウト約15名で一日の平均売上5万ペソ。月の粗利益は75万ペソ、人件費や光熱費等の諸経費などを差し引いて50万ペソ。オーナーもまずまず満足できる成果を上げることができました。

建設費も含めた投資金額は約800万ペソだったので、彼には営業時間を長くしたりスタッフを増員したりしないで維持していけば、減益シーズンを計算に入れても2015年2月までに投資総額を減価償却出来ると伝えました。減価償却は3年と設定していましたのでこのブレークは想定外の嬉しい結果でしたが、味を占めたオーナーは本年1月に新たなビジネスとして、リゾート&ホテル開業のマーケティング業務を契約してくれました。一つの成功は次のビジネスを生むというのがフィリピンに於ける当社ビジネス戦略の一つですが、この店も類に違わず良い連鎖を生んだ成功例となってくれました。
まとめ当社のレストラン開業までの業務内容をまとめると、以下のようになります;
1.基本戦略&コンサルティング
2.マーケティング&コンサルティング
3.マーチャンダイジング・コンサルティング
4.オペレーション・コンサルティング
5.スタッフ・コモンセンス教育
6.サービス・アプローチ教育
7.セールス・テクニック教育
8.トラブル・シューティング教育
9.インテリア&エクステリア・コーディネート
10. テーブル・セッティング&テーブルマナー教育
11. ディスプレイ、ライティング&リネン・コーディネート
12. カメラマンによるフードメニュー撮影
13. 販促活動(WEB、紙媒体、販促グッズ)サポート
14. 顧客&スタッフ行動データ&アンケート分析
15. 定時研修サポート
16. 定期マーケティング&コンサルティング
開業後のサポート第一は販促活動です。これはホームページ、Facebook、Twitter、広告サイトを含めたWEBプロモーション、フライヤー(チラシ)プロモーションやフリーペーパーなどの紙媒体広告利用、試食と販促グッズを組み合わせたプロモーションを中心に考えます。

第二に顧客&スタッフ行動の行動分析とアンケート分析です。一人一人の行動を見逃すことがないように、オーナーにはCCTVカメラシステムを導入してもらいます。アンケートも顧客だけでなくスタッフにも実施しテンプレートでデータ化していきます。そしてデータ分析に基づきコンサルティングを行います。またマーケティングは開業後も重要なので必ず定期的に実施していきます。盛況・不振の如何を問わず地道な作業ですが飽きずに続けることです。軌道に乗ったところで満足・安心してしまうと上昇志向が止まります。上昇停止の次に待っているのは転落開始ということを忘れてはいけません。
ビジネスに再チャレンジする人のために過去に失敗した人であっても再チャレンジを考えているのならば、何故失敗したのか検証することを怠ってはいけません。それがフィリピン人に任せた結果の失敗であっても、その人間のせいにして終わらせてしまうのではなく、任せたこと自体が自分の失敗として受けとめて検証するべきです。必ず見えてくることがあります。事実は変えられないのです。自虐的にならず冷静な気持ちで客観的に検証して下さい。そうした努力が新しい計画に活きてきます。地道な努力を継続出来る人には必ずチャンスが訪れるのです。