Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
注)当コラムの著作権は全てBarros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。

会社ウェブサイト   Facebook公式ページ    Twitter公式アカウント

2014年2月26日水曜日

フィリピン離婚承認裁判/情報に振り回される人たち

安易に信じてはいけないネット情報フィリピンにおける離婚承認裁判についてネット検索すると、違法行為や誤報で溢れかえっていて、どれが真実か判断出来ない人も多いと思います。またさらに始末の悪いことには、ブログだけでなくYahoo!知恵袋などのQ&A系サイトでも、かなりいい加減な情報が掲載されていることがあります。

昔の情報のままアップデートできていない人が多いのですが、中には『うちでは裁判をやらずに済ませることができる』と、堂々と不正を行っていると宣言しているブログや、『殆どの人が知らない方法がある。そのやり方なら再婚できる』など、フィリピン国内での合法手続を無視しているようなものもあります。

以前の記事でも触れてきましたが、日本の常識、モノサシで考えることではないのです。合法的というものがどういう意味なのか考えてみてはいかがでしょう?
偽造文書や不正手続が横行
現在、国家統計局(NSO)では離婚承認裁判に於いての不正手続で、中央ルソン地方やカラバルソン地方にある地方裁判所(RTC)数箇所で、頻繁に偽造判決文使用で不正登録が行われている事実を掴んでおり、それらの地方裁判所と地方民事登録局(LCR)を要注意のウォッチリストに入れ注視しています。

提訴状や判決文、審決証明には特別訴訟番号が必ずあるので、その番号から偽造であることが簡単に判明するのです。

当社で調査した案件では特別訴訟番号が離婚承認裁判のものではなく、他の事件番号を使っていて、裁判官も離婚承認裁判担当ではない人物名と署名がされていました。この不正を暴いたことによってその地方裁判所の行政官1名、そして地方民事登録局行政官と職員3名が懲戒免職となっています。

またそれに関わった業者は、日本大使館周辺にタムロするフィリピン人ですがすでに逃亡しており、日本人スタッフもいたというオフィスはすでに閉業しています。

しかし離婚承認裁判を必要とするフィリピン人は増え続けているため、同じ被害を受ける人の数も減ることはないのではと危惧しています。
そもそも離婚承認裁判はいつ始まったのか
フィリピン国内でこの裁判手続が初めて取り沙汰されたのは、私の記憶では2008年3月のことになります。

この問い合わせは日本国内で離婚したフィリピン人が、大阪のフィリピン領事館にて別な日本人と結婚するために婚姻要件具備証明書を申請しようとしたところ、本国での裁判判決文と審決証明を求められたことからでした。

当時フィリピン国内では離婚承認裁判自体判例がなく、殆どの人は婚姻無効裁判(アナルメント)でそれを解消していましたので、当社でも合法的に行うことを前提でアナルメントをお勧めしましたが、その時は問い合わせだけで話は終わっています。
その後1年間で問い合わせが増加それから2009年2月までの1年間で同じような問い合わせが7件続きました。また2008年3月頃に始まり2012年10月末までの間に、駐日フィリピン大使館・領事館では数回に渡りこの件に関し迷走しています。

フィリピン人離婚者で本国での裁判手続を行っていない人に対する婚姻要件具備証明書の発行をオープン/クローズしています。酷いのは大使館でOKなのに、領事館ではダメ、またその逆であったり、1回目の離婚に限ってOKとか、担当職員によって受理不受理があったり、申請必要書類も担当職員によって言うことが違う等々、いかにもフィリピンらしい本当に見事なまでの迷走ぶりでした。

それが2012年11月になってやっと大使館・領事館ともコンセンサスがとれたようで、現在までは本国での離婚承認裁判を経た上で再婚可能となる方式になっています。

従ってこの2012年11月以降のことしか知らない人が、この時期から離婚承認裁判を行うようになったと勘違いしていて、現在まで判例がないというようなブログを見かけましたが情報不足ですね。当社では2009年9月に離婚承認裁判をスタートしています。
対訳を離婚承認裁判と名付け当社業務に加える
2008年10月から当社で3ヶ月間かけて民事登録局を中心に行政機関を回って調査したところ、地方裁判所での民事裁判「Judicial Recognition and Enforcement of Foreign Divorce」という特別訴訟がそれに該当することが判明しました。事件名が長いので「Recognition of Foreign Divorce」と略して、弁護士や判事、検察官は呼んでいました。当社では「RFD」と呼んでいます。そこで私は業務とするため「離婚承認裁判」と対訳を付けサイトに掲載しました。

その当時は「離婚裁判」とか「離婚認知裁判」と訳しているサイトがありました。また日本大使館でさえも「離婚認知裁判」としていました。これはRecognition=認知からきていると想像できますが、日本人がその単語から想像するものとしては、しっくりこないので私はあえて「承認」を使いました。現在殆どの人が使っている「離婚承認裁判」の対訳を使ったのは私が最初なのです。

ちなみにRecognitionは認知という訳語もありますが、フィリピンではそれは子供の認知に使いません。ご存知の方も多いと思いますが認知にはAcknowledgmentを使いますよね。

また正式裁判用語「Judicial Recognition and Enforcement of Foreign Divorce」も「海外離婚の司法承認及び執行」と対訳を付けました。

それから離婚承認裁判を【Recognition】リコグニションとフィリピンでは呼んでいる、という間違った情報を伝えているサイトもいくつかありますが、それは大使館周辺で非合法手続によって裁判をやらずに婚姻証明書の左側に
『証明書番号・・・・に従い・・年・・月・・日付日本国・・・・長発行の戸籍謄本に基づく離婚証明書により・・年・・月・・日、離婚が成立した』
というマニラ市民事登録局文書管理課主任の認証を付与している業者が呼んでいるものです。

本来これは裁判が終了し審決証明交付がないと出来ない手続なのですが、金を積んでこの違法手続を行っている業者がまだ沢山いるのです。これでは翻訳文面を読んで分かるとおり裁判を行っていないのは明白ですね。

裁判が終了し最終的にNSOに登録されると左側の認証だけでなく右側にも
『原告・・・・及び被告・・・・の婚姻に関する海外離婚承認裁判の申立は、特別訴訟番号・・・・に基づき・・・州・・・第・・司法区・・支所地方裁判所裁判官・・・・により宣告された・・年・・月・・日付命令に従いここに承認されるものとする』
という認証文面が入ります。

こういったさして難しくもない翻訳すら出来ない業者が、何でも知っているような顔をして営業していること自体も問題です。そしてこういう業者が不正を繰り返しているのです。

この
左右の認証が注釈として付与されることを以って離婚承認裁判の全手続が完了するのです。最初の離婚承認裁判当社での最初の離婚承認裁判依頼客は2009年9月でした。原告はマニラ市役所で婚姻登録をしていたので、マニラ市の首都圏裁判所法廷(Metropolitan Trial Court)で行いました。裁判所はマニラ市役所とマニラ選挙委員会の間に位置し、LRTのCentral Terminal駅の向かいにある、行政監察局(Office of the Ombudsman)ビルと同じ入口から入ります。

話が逸れますが、この行政監察局のオンブズマン(Ombudsman)というのは、日本にある市民オンブズマンとは違います。検察のようなもので特に大きな不正事件の取調べを行うところです。当社の原告公判期間中にフィリピン史上最悪の汚職犯罪人アロヨに関わった大物たちがここに出頭するのを何度も見かけました。
離婚承認裁判は裁判官の無知により暗礁に
原告の公判では裁判官が日本の離婚制度に不快感をあらわにし、署名捺印だけで離婚できる法律を証明する文書を在比日本大使館認証を取って提出するように求めました。私は証人喚問で法廷に立ちましたが、証言内容を裏付ける文書を日本大使館認証を付与して提出しろと言われました。私はその証人喚問の時に日本国法務省サイトに民法の英訳が掲載されているので、そのコピーと日本の某市役所サイトにある離婚手続英語ページのコピーも証拠物件として提出しURLも明記の上ネットでの閲覧を求めたのですが、日本大使館認証がなければ受け付けないと却下されました。

その裁判官が求めたことを日本大使館に伝え認証の可否を尋ねましたが、当然ながら「自分の国の法律を認証しなければならない大使館は、世界中どこを探してもないはず。裁判官が大使館に問い合わせるなら対応する」との答えをもらいました。
裁判官は選べないのでダメなら裁判所を変えるしかない
その答えを持って次の公判に臨みましたが裁判官の主張は変わらず、このままではいつまでたっても終わらないので弁護士に提訴取り下げをさせ、違う地方裁判所に提訴することにしました。(これは裁判所漁りに該当するので合法的手続を行わないと犯罪になります)

裁判官が特に女性の場合は要注意で自分の主義主張を絶対に曲げようとしません。しかしこれは主にローマンカトリックの敬虔な信者で、教会と何らかの深い関係を持つ裁判官にはよくあることなのです。教会は何と言っても離婚や婚姻無効には反対の立場ですし、こういった裁判を行うのは再婚目的であることを彼らも分かっているのです。つまり女性裁判官の視点としては原告の節操のなさを許せないのですね。

話を戻しますがこの時点で7ヶ月が経過しており、当社の離婚承認裁判顧客も他に4名いました。顧客も当社で指定したEx Parte制度のある地方裁判所で公判をしてくれたので、1日の出廷で終了し早い人では全手続が8ヶ月で終わった人も出てきました。(現在は手続が厳格化の傾向にあるため1年から1年半はかかっています)

そこで再提訴顧客も同じ裁判所で行うことにしました。裁判官も前顧客と同じでしたので彼(男性裁判官)も要領を得てきたのか、判決までも早く全手続は最初の提訴期間を入れても1年半で終了しました。

こうやって2010年の末には全ての手続を理解しました。もちろん離婚承認だけでなく他の裁判手続も含めての話です。そうでなければフィリピン国際法務の専門家とは言えませんよね。また現在は手続が次第に厳格化し長くかかるようになったため、期間を合法的に早める方法を駆使したり工夫を怠らないようにしています。
ネット内情報の信憑性
ネット内の情報を拝見する限りでは、フィリピン国内の離婚承認裁判手続を熟知している人は殆どいないようです。中に数名正しい情報、合法的情報を伝えている方がおりますが、残念ながら聞き手側が真偽の判断ができていないという問題があります。さらにQ&Aサイトなどでは自分の情報が間違いであることを受け入れず、正しい情報提供者を誹謗中傷しているのも見かけました。

当たり前ですが掲載されている情報のほぼ100%が、フィリピン人弁護士やその関係者のソースであってその人自身のものではありません。情報提供はマーケティングリサーチにも共通することですが、何と言っても情報のソースがどこからなのかが重要なのです。

また、日本大使館に聞いても分かる人はいませんが、彼らは分からないとは言えませんので「内政干渉になるので教えられない」という返答しか出てきません。フィリピン行政関係者でも自分の仕事に関する情報しか持っていません。総合的把握をするためにはその情報を一つ一つ繋ぎ合わせなければならないのです。

フィリピンに於ける裁判手続の7、8割方理解できていて正しい説明ができる日本人は、フィリピン国内には2、3人しかいないと思います。何故ならばフィリピンに於ける裁判はビジネス英語が問題なく出来て、法律用語を熟知し、公判傍聴し、全ての行政手続に足繁く通った人だけが理解できるからです。