Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
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2014年12月12日金曜日

フィリピンの防災体制はどうなっているのか(その3)

今回最終回は、フィリピンの防災体制が今後どのようになっていくのか、というテーマで記事にします。

先ず最初に日本外務省及び在比日本大使館のウェブサイトにリリースされている情報です;
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2014年3月25日、フィリピン共和国首都マニラに於いて、卜部敏直駐フィリピン日本国大使とアルバート・デル・ロサリオ外務大臣との間で,環境・気候変動無償「メトロセブ水道区上水供給改善計画(11億6,500万円)」、テロ対策等治安無償「沿岸警備通信システム強化計画(11億5,200万円)」及び防災・災害復興支援無償「台風ヨランダ災害復旧・復興計画(46億円)」に関する交換公文の署名が行われた。

「メトロセブ水道区上水供給改善計画」は、日本の優れた中央監視制御装置(SCADA)システム等の導入支援をメトロセブ水道区の上水供給エリアにおいて実施し、リアルタイムでの給水状況の正確なモニタリングと水道施設の適切な運転管理体制の構築を図るものである。これにより、フィリピン政府が進めている地方拠点開発のためのインフラ整備促進に貢献するとともに、日本企業の有する優れた技術がフィリピン国内で普及することにより、日本企業のフィリピンへの展開の足がかりになることが期待される。

「沿岸警備通信システム強化計画」は、フィリピン沿岸警備隊の主要運用船舶及び新設管区本部(ルソン北東,ヴィサヤ東)等と本庁間の通信システム整備、及びセブ港周辺海域の船舶航行監視システムの構築を行うことにより、海上安全確保における対応能力の向上を図るものである。これにより、島嶼国であるフィリピン政府が進めている海上運輸交通の強化に貢献するとともに、かかる投資環境整備を通じて日本企業のフィリピンへの進出促進が期待される。

「台風ヨランダ災害復旧・復興計画」は、台風ヨランダの被災地域において、医療施設・学校・政府庁舎等の社会インフラや経済インフラ、防災インフラ等の早期復旧・復興(施設建設,機材調達)等につき優先度の高いものを支援することにより、被災地域の速やかな復旧・復興を図るものである。これにより、フィリピン政府が進めている災害に強い社会の形成に貢献するとともに、フィリピンの持続的経済成長及び日本との緊密な経済関係が維持・促進されることが期待される。

これらの協力を通じて、フィリピンの開発政策支援を図ると同時に、今後の日本企業の海外展開が促進されるなど、日本とフィリピンとの経済関係が一層強化されることが期待される。
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上記日本政府のODA政策が、インフラ整備関連及び災害地域の復旧・復興事業を最優先としていることは明白です。つまり現状フィリピンにあるインフラ整備事業に目処が付く当面の間は、フィリピンに対する防災支援政策は事後対策を対象としたものへの支援が大きくならざるを得ないということです。

以下は日本政府が2000年以来行ってきた防災対策及び事後対策の支援概要です;
2000年
第二次オルモック市洪水対策事業計画(22億円)
メトロマニラ洪水制御及び警報システム改善計画(11億円・沿岸警備通信システム強化計画)
2001年
アンガット川灌漑用調整ダム護床改修計画(13億円)
第2次地震・火山観測網整備計画

2003年
カガヤン灌漑施設改修計画(9億円)

2007年
第1期パンパンガ河及びアグノ河洪水予警報システム改善計画(8億円・防災・災害復興支援無償)
海上保安通信システム強化計画(6億円・テロ対策等治安無償)

2008年
気象レーダーシステム整備計画(0.2億円・詳細設計)
第2期パンパンガ河及びアグノ河洪水予警報システム改善計画(4億円・防災・災害復興支援無償)

2009年
気候変動による自然災害対処能力向上計画(15億円)
気象レーダーシステム整備計画(34億円)
カミギン島防災復旧計画(10億円)

2011年
広域防災システム整備計画(10億円)
マヨン火山周辺地域避難所整備計画(8億円)

2013年
沿岸警備通信システム強化計画(12億円)
台風ヨランダ災害復旧・復興計画(46億円)

2001年エストラーダ大統領に対する弾劾が成立し副大統領から昇格したアロヨ前大統領は、エストラーダ大統領任期の残り3年間、そして引き続き大統領選に立候補し当選した任期6年間を合わせた9年間でアロヨ政権の公金横領・流用、不正、収賄という体質から暗黒時代に突入しました。

2004年から2006年はODAゼロになっています。アロヨが国民の期待を裏切っていることが顕著になってきた時期でもあります。退任前の2009年には最後の利権を得ることと、国家予算の帳尻あわせのために思いつき外遊を繰り返し何とかODAをかき集めましたが、これは次期大統領への期待値の現れであり、諸外国からアロヨに三行半を突きつけられた表れなのです。このアロヨの晩年には日米を中心とした商社も最後の利権漁りに彼女を利用しようと多少ながらも本気になったのでしょう。任期切れ直前にはアロヨ政権時代の功績を称えるキャンペーンをメディアに強制し流していました。

任期終了とともに下院議員に立候補し当選、そして旗色が悪くなると国外逃亡を図ったが逮捕、現在は入院治療を理由としてどうにか収監を免れているだけのアロヨが牛耳ってきたこの9年間は、フィリピンの経済成長が完全に阻まれ、アロヨ一派だけが私腹を肥やす結果となり、国民にとっては全く無為な時であり、諸外国からは「アジアの病人」と揶揄される時代となりました。特に政権の晩年には諸外国からも経済援助を無視され、意味のない小さなプロジェクトを乱発し小銭着服に明け暮れた挙句に、信頼失墜を招いた責任は万死に値するものです。

アキノ大統領は、2010年大統領選でアロヨと同類の汚職候補である建設族ビリヤールを破り当選を果たしました。そして現在彼の汚職撲滅・インフラ整備という二大政策の効果によって、フィリピンの防災市場が再び輝きを取り戻しつつあるのは紛れもない事実なのです。

最近の外国企業が積極的に参入姿勢を見せている背景には、こういった現政権に対する大きな期待の現れと見ることができます。そして諸外国としても2016年に実施される大統領選挙の動向を注視しているのですが、汚職撲滅政策を地方行政、関係省庁の順に拡大し2013年からは上院・下院議員、現在は副大統領までに追及が及んでいることから、次期大統領選では現大統領の政策を継承する後継大統領が選出されるものという期待が大きいのです。

従って現政権の政策を継承し発展させることを第一に掲げる人物が次期大統領に当選すれば、PPPによる諸外国のインフラ事業投資がさらに加速化し、現況で毎年15~30%の成長が見込まれる防災市場は、国家予算の3~5%(現在0.5~0.6%)まで拡大していくものと考えています。私が2016年はフィリピンという国の将来を賭けた大統領選となると言った理由には、そういった背景があるのです。

注)当コラムの著作権は全てフィリピン法人Barros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。