Barros-Keiコラムとは?

フィリピンにおける裁判手続きや結婚手続きなどで多くの誤認情報をネットで見かけます。またフィリピン人からの古い口コミ情報を信じている人も沢山います。以前日本のかなり手広くやっている行政書士グループ会社ウェブサイトに、当社の文章を丸々パクられたことがあります。責任者にすぐにクレームを出し全て削除させました。たとえ肩書きが弁護士や行政書士であっても、日本にもフィリピンにも専門知識のない業者は数多くいます。しかし知識や情報を持っていない依頼者の方たちは、その肩書きを信じて頼るしかありません。そういう現状から本コラムが、これからフィリピンで何かアクションを起こそうとする方たちのために、少しでも役立つものになればいいと思います。また立派な肩書きを持つ人たちは、それに恥じないようもう少ししっかりと勉強してから情報を発信すべきです。そもそも知識や経験というものは、フィリピンに長く在住しているから自動的に得られるというものでは絶対にありません。同じようなレベルの人間としか交流がないのであれば、たとえ50年在住していようとも、濃い日々を過ごした人の1ヶ月にも及ばないことがあるのです。当コラムの目的はそれらを正し正確且つ最新の情報を伝えることにあります。
注)当コラムの著作権は全てBarros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。

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2014年12月20日土曜日

フィリピンの裁判で失敗しないために

偽造文書、偽装裁判などの被害について今まで記事にしてきましたが、今回は離婚承認裁判や婚姻無効裁判を依頼するにあたり、「失敗しない/失敗するリスクを減らすためにはどうすればいいのか」というテーマでお話します。

1.フィリピン人の伝手では探さない。
フィリピン人のネットワークを使っても情報が古かったり不明確なものが多いので安易に信用しないことです。裁判手続は年々厳格化しており「私のときはこうだった」などという情報は全く役に立ちません。ここで決めてしまうような方は100%失敗すると断言します。

ただ頭ごなしに否定してしまうとフィリピン人の立場やプライドもありますし、それが婚約者の伝手であったならばその人間関係に支障をきたすこともあるでしょう。このような場合でも自らWebサーチで情報を得る作業を続けながら、任せている振りをして最終決定は自分がするという鷹揚な構えでいることです。少なくともフィリピン人に丸投げするようなことは愚挙であることを認識しておくべきです。

2.日本の行政書士でも無条件には信用しない。
行政書士にはネットワークを構築し組織化して業務を行っているところも多くなってきています。掲載されている文章をよく読むことが重要です。得てして行政書士には勉強不足で文章力が欠ける人間が多いのでホームページが立派でも文章内容がスカスカというものも見受けられます。ホームページだけでなくブログでもパクリが多くあります。

「裁判をしなくても結婚できる方法を発見しました」などという文言掲載しているのも見掛けますが、大体にそんなことを「発見」という言葉を使うことからして日本語能力のなさを露呈していますし、コンテンツのもって行き方が詐欺商法のウェブサイトに似通った順序になっています。所謂読み手に質問を投げかけながら答えも言っている誘導サイトです。行政書士の殆どはマクロな定性情報だけしか持ち合わせていないのです。

事例やQ&Aも掲載しているようなホームページを熟読してここなら頼めるかなという所があれば事前にある程度の裁判知識や情報を仕入れておいてから電話で問い合わせをしてみると良いでしょう。そこで納得できる説明を聞くことができれば契約していいと思います。ただし必ず契約書内容を確認し不明な点は問い合わせることが重要なのは云うまでもありません。

メールで問い合わせをするのが相手が何を言ったのか証拠として残るので後々のためには最善の策です。ただし返信に日数が必要以上にかかるのは対象外とします。あとは返信内容。やはり納得ができるようなものかどうかです。中身がなければ対象外とします。

なぜこのようなことが必要なのかと言えば、日本の行政書士はフィリピンで訴訟を起こせる権限はもちろんありませんが、結局はフィリピンの業者や弁護士の伝手を頼り仕事を振るだけだからです。法廷の証言台に立ったこともなければ傍聴したことさえないのです。当然英語力も必要になります。問い合わせが来ても詳細に説明できるはずがありません。

訴状をよく読み、判決文や審決証明もしっかりと読んでいる人ならば、内容はある程度は把握できるでしょうし、原告弁護士と進捗について常に連絡を取り合っている人であれば、裁判手続の流れが理解できてくるはずです。依頼を決定するまでの重要点はそこにあるのです。

数は多くはないですが職業意識が高く、自らがフィリピンに何度も足を運んで裁判所を訪れている行政書士の方もいます。日本の行政書士に依頼するならばこのように努力を惜しまない方を選ぶべきでしょう。

肩書きが行政書士や弁護士であってもフィリピンでは無力です。彼らは単なる仲介者に過ぎないこと、仲介者がいるということはその分費用がかかるということ、フィリピン人関係者をマネージメントできる人間がいなければ手続がいい加減になることを忘れてはいけません。そういう人間はメールでの言葉遣いや言い回しでボロを出しますので判断できると思います。

3.英語力に自信があるなら自力でフィリピンの弁護士を探す。
少なくとも英語である程度理解できるならば自分で探してみる努力をすべきです。直接話しができてメールのやり取りができる弁護士が見つかれば、会話を繰り返すうちに弁護士の資質も分かってきます。知識や経験がない弁護士は質問を繰り返していると、面倒臭がり返答してこなくなったり信じることができないのかと怒ったりします。

信用できないのかというのはフィリピン人が日本人を謀るときに使う得意手口ですので、そういう言葉を吐いた瞬間に信用度ゼロと判断すべきです。そして大体はこの時点で単に金目当てのバカかどうか見当がつきます。

4.契約で裁判手続のどこまでカバーしているのか確認する。
意外と知られていないのですが実はこれが一番重要なことです。

弁護士の業務は提訴状準備に始まり公判への出廷、そして判決文取得までです。しかしフォローアップがこれだけでは終わったことにはなりません。再婚を目的とするならばフィリピン統計庁(PSA/旧NSO)に注釈付の前婚姻証明書を取得するまではこの手続が終わったわけではないのです。

しかも判決文取得までの仕事に支払う弁護士報酬(アトーニーズ・フィー/Attorney's Fee)は20万ペソが相場で、フリーランサーの弁護士ならば30万ペソまで請求してきます。

日本人が費用を聞くと全ての弁護士はこのAttrney's Feeを提示します。ここで多くの日本人の方はAttorney's Feeを裁判費用と勘違いしてしまいます。彼らはできる限り多くの付加報酬を得ようとしますから、裁判に関わる全ての手続費用、交通費、食費などの諸費用は別途に請求してきます。

現実としては、判決文が交付されてからが手続の最終段階となり、判決告示、法務局、検察総局の審査を経て審決証明及び登録命令取得手続、登録移管手続、4~5ヶ月かかった上でやっと注釈付前婚姻証明書を手にすることができるのです。

この最終段階の手続には弁護士は関わりません。彼らの仕事はその前で終わっているからです。それではこの手続は誰が行うのでしょうか?誰も行いませんし別途依頼すればまた費用がかかります。放置してもいつかは登録されますがそれが半年先か1年以上先のことになるかは誰にも責任が持てません。

私が一番重要と考えるのはそういった理由からです。そこまでを全てカバーしている契約が可能なところを前提に見極めなければなりません。

5.まとめ
今年の中頃からまたまた手続の期間が長引くようになりました。法務局や検察局、民事登録局が裁判所に判決文の真偽を確認する方法が一層厳格化されたからです。どういう機関での手続が厳格化され要件は何かについてはパクられるのでここでは言及しませんが、裁判手続というのは常にアップデートが必要であり、それは毎年数多くの事件を扱っていなければ分からないことなのです。

アップデートされた情報で対応できない弁護士がいたら、それは客がいない=金に困っている弁護士と考えて間違えありません。中には弁護士資格を更新する金もなく、案件を取ると他の弁護士に任せてしまう最悪な者もいるのが現実なのです。これでは仲介者と同じではありませんか?

手続の厳格化は偽装・偽装・不正手続が多くなったからに他ありません。また偽造・偽装・不正という馬鹿げたことをする90%以上は恥ずかしいことに日本人関係なのです。まともに取り組んでいる人間にとってこういう日本人たちの存在は迷惑以外の何者でもありません。彼らはフィリピンに在留していることだけをアドヴァンテージにし、さも何でも知っている振りをしている人間たちなのです。

こういう人間に任せてしまうと仲介者としての取り分も上乗せされ最終的にAttorney's Feeの1.5~2倍の費用がかかる結果となります。仲介者は厳密に言えばフィクサー/Fixerの範疇に入るのでアンチ・フィクサー法に抵触しています。日本の法律に関係ないフィリピンの裁判なので、広義に考えれば行政書士や弁護士だろうが内政干渉となりそこに報酬があればフィクサーと見做されます。もし滞在中に訴えられでもすれば身柄拘束や罰金ということも可能性ゼロではないことを知るべきです。

2年ほど前に日本の弁護士が離婚承認裁判に証人として出廷したのを傍聴しました。彼は英語が上手く話せないので通訳が付きました。しかし残念ながら日本の協議離婚制度を彼が説明し裁判官に納得してもらうことは土台無理な話でした。弁護士であろうと先ず英語が理解できない、そして何よりカトリックに基づくフィリピンの婚姻契約制度を理解していない日本人が証言台に立っても、無力な存在でしかないのです。

裁判手続はマネージメントがしっかりしていても思うに任せない進捗になることがあります。しかしそれに対し怒って督促を繰り返したりすれば、関係者を焦らせ偽造に走ることもあるので最悪の結果になってしまいます。裁判手続終了をただ待つ身の方々にとってはかなりの精神修練を強いられますが、進捗に一喜一憂せずにどっしりと構え何事にも動じない精神力が必要です。

注)当コラムの著作権は全てフィリピン法人Barros-Kei Corporationに帰属します。これらのファイルを許可無く複製、転載、流用することを禁止します。